(音楽之友社)★★★★
これはロシアの偉大なピアニスト、エミール・ギレリスについて書かれた書物で、
伝記ではなく、いろいろな人の言葉など事実を書き記したものです。
ギレリスは1916年に生まれ、1985年に亡くなっていますが、この本は2007年に
出版され、日本語訳は2011年に出版された最近のものです。
この本によると、第2次世界大戦の中、ロシアの名ピアニストとして生きることがいかに
大変なことだったかとてもよくわかります。
戦争中は戦地へ慰問演奏に行かされ、ギレリスのピアノの師であるネイガウスが無実の罪のため
捕えられた時は、ギレリスがスターリンに直接命がけで掛け合い助けたり、
戦後は、海外で演奏する時、亡命しないようにと常に監視がつけられたりと、さまざまな
エピソードが書かれています。
ギレリスの演奏はCDでしか聴いたことがありませんが、そのような生涯を送ったことを知ると、
いっそう感慨深い響きに聴こえてきます。