(新潮社)★★★★
亡くなるひと月前まで書き継がれた中村紘子さんの最後のエッセイ集。
ピアニストの立場から見たコンクールの裏側、
ピアノ界の現状など、表現豊かな文章で書かれていて、
とても興味深かったです。
例えば
・国際ピアノコンクールで、日本人と欧米人との違いは、響きがない、固い、単調
・ピアノ界を盛り上げるには、オーラも実力も備わった国際的に通用する真のスーパースターの力が必要。
しかし日本にそんな若者のいる気配はない。
・日本の子供には時折びっくりするような素晴らしい才能の子供に出会うが、10代半ば過ぎになると、
ただの平凡なつまらないピアニストになってしまう。
・バッハのポリフォニーを何層ものミルフィーユのように音色で美しく弾き分け、生徒に弾いてみせる
レッスンのできる先生が、日本には大変少ない。
・1995年若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクールで優勝したランランは、
舞踏のようなド派手な演奏ぶりだったが、目を閉じると音色の艶やかさと並外れた音楽性に
感動した。
などこれからの日本のピアノ界への提言を書き記して、私達ピアノ教師にもっと頑張ってもらいたいと言っているような気がしました。